単身 2003年 香港(九)

キンバリー再び / おみやげ合戦

2月27日(木)晴れ

 太極拳in香港(9) アンダーバーをクリックしてご覧下さい
最後のレッスン

グルメランチ(3)
毎日ランチをご馳走してもらっていたので、お礼にとヘレンとリリーさんに
ディオールのネイルをお返しのプレゼントとして用意した。
「中を見てもいい?」
「もちろん」
「わー、こんな・・・高いわよー。これを私からtuziにプレゼントするわ」
なにぬかす!それは私からヘレン用に選んだ色なのよ」
リリーさんにも「それはないだろ!」とたしなめられるヘレン。
「だって、ランチなんて安いのに。それに太極拳も教えてもらったというのに・・・(困)」
まあ、これで私の気はすんだ。ランチなんかで借りをつくりたくない。

「tuzi。今日は12時にいつものエスカレーター前に来てね」
「えっ!今日は遠慮しておきます」
「今日はリリーもいっしょだから、行きましょう」
「だって、またあなたの友だちたくさんくるでしょ?」
「今日はリリーと鳩の時の3人だけだから・・・ね!」
ふう・・・(ため息)「わかりました」しぶしぶ了承。リリーさんもいっしょでは仕方ない。
だって鳩の時の3人のおば様とリリーは友人ではないのだ。面識もないという。
でも、私との食事が今日で最後というのでリリーさんも来ることになったのだ。
あまり気乗りはしないが、最後なんだし。どうせ暇なんだし、まあいいっか・・・。

キンバリー再び
グルメランチに毎日Tシャツでは恥ずかしい。
大会の帰り、バーゲンで買った服を着よう。グルメランチは洋服にも気をつかうのだ・・・。

待ち合わせの場所に向う。
ヘレンは、ネイルのお返しに高級チョコレートを持ってきていた。
「いらないわよ!あなた家で食べなさいよ!」と突っ返した。
いくら高級でもチョコはチョコ。いらん!それに明日帰るのに荷物になるだろっ!いらん!
ヘレンは困っていたが、あきらめてくれた。

今日のランチはキンバリーホテルのレストラン。実は私はここに来たことがある。
1995年はじめて香港に来た時、フリータイムのランチを食べに来た。
その時はガイドブックに載っていたのを見てここのレストランを選んだのだった。
ヘレンは「キンバリーのシェフは香港一よ!」と言った。
やっぱりそうなんだ・・・95年の時も味が好かったのは印象に残っている。

本当に美味しい!美味しい料理は人を幸せにする♪
「幸せー!」と言ったら、「tuzi。美味しい、と幸せー!は意味が同じ?」と聞かれた。
「いいえ、違います。幸せー!は中国語の‘口福’です。美味しい料理に縁があって嬉しい。私は幸せ者だ、ということです」
私もスポンサーにヨイショできるようになってきたじゃないの。
これも美味しい料理の魔法ね♪セレブサロンとの付き合い方も板についてきて、
お茶もさりげなくついだりつがれたりできてきた。最後になって・・・

キンバリーの味は他を寄せ付けないほどダントツの美味しさだった!香港一というだけある!
「私は明日、日本へ帰ります。ごちそうさまでした!」
おば様方に心からお礼が言えるキンバリーの味!

ハイアット・リージェンシー宝石店
リリーさんが私に太極拳のVCDをプレゼントしてくれると言う。
そのVCDを弟さんが買っておいてくれたというので、リリーさんとふたりで弟さんの勤め先
ハイアット・リージェンシーホテルに向った。リリーさんも弟さんの勤め先に行くのは初めてだという。
私もハイアット・リージェンシーホテルには入るのは初めてだった。

黒で統一された重厚な造り。ホテル内の宝石店がリリーさんの弟さんの勤め先だ。
店内の品物は安いものでも1、000、000円はくだらない。ゼロの数が多すぎる・・・。

VCDのプレゼントは私にとってありがたい。
今回も既に数枚は買ってあったので、ダブってないか開けてみた。
持ってないのだったので安心した。
そして、このセレクトは素人が選んだのではないことが私にはすぐわかった。
「これは、あなたが選んだのですか?」弟さんに聞いてみた。
「いえ、太極拳をしている知り合いに頼んで買ってもらったのです」
やはりそうだったか。日本に帰って見たらとても勉強になった。(自主トレ日記2003年参照)

 リリーさんと太っ腹の弟さん


店内に客はいなかったし、弟さんと従業員の男の人とリリーさん、私の4人しかいなかった。
従業員の人が「何式してるの?」と聞いてきた。
「楊式です」「陳式いいじゃない」「そうなんですよね。私も覚えたいと思っています」
と、四方山話してお茶していた。弟さんがブレスレットのケースを取り出し「水晶だよ」と言った。
「へえ、本物ですか?」天下のハイアットで失礼な!と言われそうだが、だってわからんじゃないか。
知り合いのよしみで案外「偽物だよ」と正直に話してくれるかもしれない。
「これは本物です」
「ふーん、きれいですね」
リリーさんは手にはめてみたりしている。オーソドックスな白の他に黄色や緑、ピンクなんかもある。
いろんな色があるものなんだ・・・。
「どれが好き?」
「これなんかきれい」
「いいよ、それ持ってって」
えーっ!いいんですかあ?」まさか、くれるなんて思ってもみなかった。
くれるとなると、こっちのほうがいいかな?いや、こっちかな?と私は急に迷いだした。
「じゃあ、こっちのほうが・・・あー、こっちもいいなあ・・・うーむ・・・」
「いいよ、ふたつでも」
なんて太っ腹の弟さんなんでしょ!結局決めかねてる私は3個も、もらっちゃったのでした・・・。

私がぐずぐず水晶で悩んでいる間、リリーさんは携帯電話でヘレンに連絡していた。
ヘレンは何をあげたらいいか決めかねているのだ。
「tuzi!あなた何か欲しいものはないか、へレンが聞いてますよ」
「ないっ!」
それをヘレンに伝えると、電話の向こうで困ったヘレンはリリーさんに相談する・・・という会話が延々続いていた。
なにもいらないってば!

ヘレンの涙その1
ハイアットを出て、ヘレンと合流。コスメショップに行く。ヘレンは化粧品セットの品定めをしていた。
パレットにシャドーにチークにルージュ、ネイルがアタッシュケースに入っている。
すごい色数だ。絵の具セットのようだ。
「どれがいい?」とヘレンは聞く。友人にプレゼントするのだという。
「私だったら、こっちかな・・・」
「じゃあ、これをtuziにプレゼントするわ♪」
ギェー!!いらないよ!こんなの使わないもん
私はシャドーなんてしたことないし、口紅だってほぼ決まった色しか使わない。

がっかり肩を落とすヘレン。
「だからあ、なにもいらないってば!」
リリーさんはVCDあげたからお役目ゴメンとばかりに余裕ありありだった。
「私だけ何もtuziにお礼してない」とヘレンは言う。
「お礼なんていらないわよ。毎日ランチごちそうになったじゃない」
「でも、なにか残るものをあげたいのよ」
「そう言われても・・・」
本当は、関羽の彫刻、翡翠・・・欲しいものはたくさんあるけど、まさかこっちから言える代物ではない。

リリーさんとは別れても、ヘレンは私から離れなかった。
「もう3時過ぎたわよ。家に戻らなくて大丈夫?」
「4時までに帰らないと・・・」
「じゃあ、ここで。手紙頂戴ね。太極拳は毎日練習してね」
ヘレンは私に抱きついて涙していた。
うーー、やめてくれ。サクッといこうよ。泣かれると困る・・・。
「じゃあ!」
香港ネイザン通りで、涙するヘレンと手をふって別れた。

ヘレンの涙その2
私は信号がちょうど赤で立ち止まった。
そこへ、ちょん、ちょん!肩を叩く人が・・・振り返ったらヘレンだった。
「なんだよっ!」
「やっぱり、tuziになにかプレゼントしたい・・・グスン」
「えーー。いらないよー」

目の前に若者向けのショップがあった。新作のTシャツが売られていた。
2枚でも1枚分のお値段。
ヘレンは「これはどう?」と強引に店内に私を引っぱった。
「いらないよー。勘弁してくれー」
ヘレンは私に「これなんかどう?」「色はピンクがいいかしら?」と合わせてみていた。
「じゃあ、これ・・・」と無理に決めたTシャツは運悪くサイズがなかった。
「だから、出ましょうよ」
でも、ヘレンはどうしても、私に買ってあげようとがんばっていた。
「わかった、わかった。じゃあ私はこれ。もう1枚はヘレンのにしましょう」

たかがTシャツなのに、ヘレンは試着室に入り、吟味した。
「tuziも試着してみなさい」
「いいよー、大丈夫入るから・・・」と私は鏡の前で合わせてみるだけ。ヘレンは違う。
ここがだぶついてるだの、丈が長いだの・・・。
たかがTシャツ一枚になんでここまで吟味するんだっ!?

ようやく私へプレゼントを持たせることができて満足したヘレンは、またも涙していた。
「こんなのしかプレゼントできないなんて・・・グッスン」
おい、おい。もうこれ以上勘弁してくれよ。
「ありがとう」と言って今度こそヘレンとさよならした。
私はこのお経Tシャツを着るたび弟子第1号ヘレンを思い出すことだろう・・・


ホテルに帰って荷造りと格闘する私・・・。








vol.94