単身 2003年 香港(十)

帰国 / 税関検査

2月28日(金)曇り

最後の朝食、お粥
隣の食堂は7時開店だ。代理店の蝉さんは7時45分に迎えに来ることになっている。
香港最後の食事をしに行く。
奮発して‘三元及第粥’にする。どんなんか知らないがネーミングがいかにも豪華そうだから・・・。

「(ゲッ!モツじゃん!しかもモツ三点セット!)」
名前からは想像できない・・・。

税関検査
今回はとにかく荷物がやたら増えた。
機内に預ける荷物でほぼ20kgになっていたので、手荷物もけっこう重くなってしまった。
初めてカートを使った。

成田の最終チェックポイント税関検査。これまで一度も検査をされたことがない。
「どちらに行ってましたか?」
「××です」
「何を買いましたか?」
「おみやげです」
「誰かから頼まれた品物はありますか?」
「ありません」
「はい、お疲れ様でした」
「ありがとう」
このような短い会話だけで、パスポートをチェックされてあっさり通過。
背中には剣の箱があったとしても・・・

今回もそんなものだろうとタカをくくっていた。
「どちらに行ってましたか?」
「香港です」
「何を買いましたか?」
「おみやげです」
「誰かから頼まれた品物はありますか?」
「ありません」
ここまではお決まりだった。
「その箱はなんですか?」
「飾り物です」
「武器の形をしてませんか?」
「おもちゃです」
「こういう形をしてませんか?」と武器のイラストファイルを広げてみせる係官。
「はい、確かに形はそうですが、おもちゃです」
「ちょっと見せてもらっていいですか?」
「はいどうぞ」
私は、見るなら見ろ!とばかりに開き直っていた。
自分からテープをはがそうとするのに、係官はわざわざナイフで箱を切ろうとする。
やめてくれよ!背負えなくなるじゃないか!
もう、公安警察行きを覚悟してるのに、この期に及んでまだ背負おうとする私・・・私はすっかり観念していた。
「おもちゃでも、材質によっては真剣になるんです。一応調べさせてもらいます」
なんとでもしてくれ!抵抗はしないから!

そう言って係官は刃に触った!
こいつ!扱いを知らんやっちゃな!!
と、違法は私の方なのにむかついていた。
磁石を刃の表裏に丹念に当てている。
「(あーあ、くっついちゃうよ〜連行されるよ〜)」
てっきりそう思っていたら、なんと無罪放免!
ラッキーなことに、鋼は使われていなかったのでした!
「(ラッキー♪)」

私が鋼でもなく、蛇皮を見つけていたにもかかわらず、それを今回購入を断念していたのも・・・。
ミラクルだ!

「大丈夫ですね」と係官は言った。
大丈夫も何も、この箱をどうしてくれる!背負えないじゃんよ!
「(だから、おもちゃだって言ったじゃない。背負えるように直してよ!)」
と心で思ってはいたが、私はいつだって低姿勢キープ。平常心を失わない。
でも、何も言わなくても係官はガムテープで補強してくれた。
「(ホッ・・・蛇皮買わないでホントよかった・・・)」

考えてみたら、現在テロ対策で厳重検査実施中だった。

香港の空気
日本に帰ってきたらニュースで香港で肺病が流行っていると流れている。
その広まりはアジア全土に及び、今も拡大の勢いは止まらない。
WHO世界保健機構でも発生源である中国広東省、香港への渡航自粛を発表した。
異例の処置である。(2003年4月2日現在)
新種のウイルスと考えられるSARSの抗体ワクチンは今のところない・・・。

私は香港島側の空気の悪さは1995年から感じていた。
が今回、九龍側までも空気の悪さを感じた。
香港に限らず中国は空気が悪いと私は感じている。
特に都市部の発展と比例して年々悪化しているように思う。
天気予報でも気温、湿度と共に「汚染度」がパーセンテージで表示されるほどだし。

あの空気じゃ、肺がやられてもおかしくない。が、私の見方だ。
向こうの人たちといっしょに撮った写真を見ると、香港の人たちの顔色はどこかかすんでる。
そういえば「tuziは肌がいい」と、よく言われた。ヘレンにもリリーさんにも・・・。
私は、色白という訳でもないし、もち肌でもない。
どちらかといえば皮膚が弱くてすぐ痒くなってしまう、弱い肌だ。
それでも、写真で見るとやはりその差は歴然としていた。

日本に帰って、いつもの自主練習場の河原へ行って深呼吸。空気の透明感を感じる。
「香港は大好きな街だけど、この空気はないもんな〜・・・」


2003年ミラクル香港完


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vol.95