太極拳in香港(9)
2月27日(木) 教授4日目
呼吸
ヘレンに教授するのも今日が最終日。
細かい動きを修正する前に、呼吸を知ってもらいたかった私は、呼吸を声に出して動いた。
「起勢!ブレス、鼻から吸ってぇ・・・・手を下ろしながら・・・ハーッ・・・」
「吸ってぇー・・・・ハーッ・・・・吸ってぇー・・・・ハーッ・・・・」
わかってもらえただろうか?
私はメモに書いた。「吸是不意識、吐是只意識」
意識して吐いて、吐ききると自然に吸うことになるのだから。ということを私は言いたかったのだ。
‘発頸’があれば、意識して吸うことも時には必要になるが、
24式では‘発頸’はないと思ってよいから、呼吸は自然に吐くことだけに心がけた方が、
体にも良い、気も練れる。と私は考えている。
問題のパイフーリャンチィー(白鶴亮翅)とタンビエン(単鞭)に移るところを最後に特訓し、一緒に動いて〆た。
「ありがとうございました!」と言って、ヘレンは深々とおじぎした。
「どういたしまして!」と、私もおじぎする。
「ありがとうございました!」またヘレンはおじぎした。
もう、いいっちゅうねん!「どういたしまして!」
「どういたしまして!」へレンがまねて言った。
あわてて、リリーさんが「それはtuziが言うせりふなの!」とへレンを叱る(笑)
最後まで天然のヘレンだった・・・。
全力で
私は今持ってる力を出し切って、ヘレンに教えた。
中には知ったかぶりのまゆつば説明もあっただろう。
完全に間違って教えたこともあるかもしれない。
私としては人に教えるなんて恐縮なことであるが、教えるとなったら徹底して教えたい。
呼吸までサラッと話せたので、後はへレンの毎日の鍛錬にかかっている。
私は、日本で学校の非常勤講師(副業)の仕事をしているが、
自分では「こんなに甘い先生はいない」と思っている。
しかし、全授業が終わって安心した生徒から聴こえてくる声は
「先生の授業が一番ハードで厳しかった」なのである。
なにぃー!?「こんな優しい先生いないだろ!」という自己評価とは裏腹である。
遅刻しても叱らない・・・授業中漫画を読んでても叱らず無視・・・。
やる気のない者に何を言っても無駄だと思うから何も言わないだけなのだが・・・。
私の授業に強制はない。その代わり黙って落とすだけ。
なのに「先生の授業が一番ハードで厳しかった」は勝手な言い分だろ!?
ひどいのになると「難しすぎて授業がわからなった」なんていうのもある。
ついてこいよー!
半端なことを教えたくないあまり、要求が高すぎて、あれもこれも覚えて欲しいという親心が
裏目に出て「tuziは自分に甘く、他人に厳しい」と言う声さえ聴こえてくる。
確かにそうかもしれないが・・・。
ともかく、ヘレンには要求が過ぎたかもしれない。
「こんなはずじゃなかったわ。もっとお気楽でよかったのに・・・」と思っていたかもしれない。
それもこれも中途半端に終わらせたくなかった私の親心である。
最低、正しい姿勢と型を知っていれば、体を痛めず、あとは繰り返し鍛錬するだけである。
ひとりで動けるようにさえなれば、癖も長くのうちに消えるだろう・・・と。
何年後かに香港に行った時、へレンが太極拳を続けていてくれることを願ってやまない。
2003年太極拳in香港完
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vol.33
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