武者修業in北京(3)

2002年3月3日(日)am8:30

棍棒の練習
今日は日曜日。にもかかわらず、既にみんな集まって棍棒の練習をしていた。
まだ、3つの動作くらいまでしか進んでいないとのこと。
近くにいたおじさんが、私に棍棒を貸してくれると言うが、即座に出来るものではない。
「私はいいんです、どうぞ練習してください。私は空手棍(カラテコン)しますから・・・」と見よう見真似で動いてみた。
甘かった・・・へっぴり腰になってるのが自分でもわかって恥ずかしいのなんのって・・・。
「いつから始めたんですか?」と聞いた答えにびっくり!
「さっきよ」「へ?・・・さっきって・・・?」
ここで氏隠が付け加えた。「30分前からだよ」私は開いた口がふさがらなかった・・・。
私の教室だったら、ここまで来るのに早く見積もって、1ヶ月はかかるだろう。
それだけ環境に開きがあるのです。

超大物ゲスト!
大方の人は帰ってしまい、残った人たちで練習をしているところへ、黒い革ジャンの紳士が現れた。
今まで見たことなかった、体格の立派な若者も数人やってきている。
氏隠が「馬先生の友人だよ」とささやいた。
「ふうん・・・」馬先生を訪ねてふらっと立ち寄ったという。

その革ジャンの紳士は、話しながら(私には早口で聞き取れない)周りの立派な体格の若者をいとも簡単に飛ばしていた。
「(はあ?何じゃ、今の!)」しかも、指で飛ばしていたのだ!自分の目を疑うとはこのこと・・・。
なんだかしきりに講義をして、自分の手を相手に触らせたかと思うと、どういうわけか若者が飛ぶ。
「(?)」若者たちは「おすっ!お願いします!」とばかりに挑むが、
細身の革ジャンの紳士に、いとも簡単に投げ飛ばされてしまう。
氏隠が「この先生凄い人なんだよ。俺は名前は知ってたけど会ったのは今日が初めてなんだ」と言う。
「えっ?じゃ、私はラッキーってことね!」
「そうだ!」革ジャン紳士の本業は‘文学’だそうです。


この後、後ろ向きの青年は飛んでしまう


微笑みながら、いろいろ指導しながら突然飛ばしてしまうのだ・・・。
この紳士が現れることは滅多にないらしく、若者たちは熱心に話を聞いている。
私はこの光景を50cmも離れない所で見て、聞いていたが、なにが起きているのかさっぱりわからない・・・。
「(んっ?なんで?)」とっても、熱心に話して聞かせ、笑いながら飛ばしている。


何度挑んでも、やっぱり飛んでしまうのだった・・・


革ジャンの先生は笑顔だ・・・あまり突然すぎて、さっぱり解らない私・・・目くらましにあったようだ。

おばちゃんも挑むが、指一本を押させて「不用力」などと言いながら、
その指をピンッ!と弾いただけで飛ばしていた。「(おい、おい・・・どうなってんだ?)」
私は氏隠に「听不董、看不董、奇怪阿ー!」(聞いてもわからない、見てもわからない、ふしぎー!)
終いには「真的飛?」(あなた、ホントに飛ばされてんの?)と言ってウケていた。


指をさしてなにやらつぶやく馬先生「指がどうしたと言うのだ?」



時間延長
こんなチャンスは二度とないとばかり、コーラスの練習が始まっても(時間が来ると
別のグループがその場所を使いにやってくる)場所を変えて交流はなおも続いた・・・。

場所を移動しながら、昨日の推手のお姉さんと「听不董、看不董、奇怪阿ー!」と盛り上がっていた。
このお姉さんはとっても太極拳が上手で、さぞ長いこと(10年くらい)している方なのかと思い、聞いてみたら
「6ヶ月」と言う。6年の聞き間違いかと思って「6年でしょ?」と言うと「ううん、半年!」と言うではないか!
もう、私の恥ずかしさは頂点に・・・。
「(5年太極拳してるだなんて、とても恥ずかしくて言えないよ〜・・・)」と凹んでしまった。
だから、お姉さんも「听不董、看不董、奇怪阿ー!」なのね・・・。

それはそうと、こんなチャンスはないほどの凄い人なら、写真をと思ったが、さすがに練習の最中にシャッターはきれない。
私がされたら不愉快だし、おとなしく‘お客さん’として見ていた。
そこへ、革ジャン紳士といっしょに来ていた、もうひとりの馬先生の友人が、私に「手を出して」と言う。
両手の掌を上に向けて差し出すと、その先生は差し出した掌から上10cmくらい離れた所に
自分の掌を下に向けてかざした。
「(だから、なんなの?)」と思っていると、先生が「わかんないかなあ・・・」と言い始めた。
そのとたん!「熱いっ!」そう!私の手が熱くなってきたのです!
ストーブにでもあたっているように・・・。
「(これが、気?)」
いいえ、これは気とはまた少し違うのかもしれません。
‘気’は体のどこから出るかご存知ですか?
私は、てっきり‘手の指先’から出るものと思っていたのです。
でも、中国のみんなに言わせると、‘頭のてっぺん’から出るとのこと。
自分の頭のてっぺんから「出気(チューチー)」し、相手の頭のてっぺんから「入気(ルーチー)」する、と
口をそろえて言いわれました。
「ほほー、そうなんだ・・・知らなかった」勉強になりました!

 大物ゲストのおふたり
革ジャンの先生が若者を軽々と飛ばしていた。左の先生は私に気?(温度)をくれた
中国の太極拳は奥が深い。わからないことだらけです・・・
人が指一本で飛ぶなんて、今の今まで‘まやかし’と思っていたことを、
この目で見てしまった・・・うーむむむ・・・


あたって砕けろ!
革ジャン紳士、馬先生、王先生(私に‘気’をくれた先生)の「三人揃い踏み」は凄いことだというので、
お姉さんに「写真撮れないよね・・・」と言ってみたら、「可以、可以!没関係!(ぜんぜん大丈夫よ!)」と。
「うっそおー!?」
「没問題!(かまわないわよー)」と。
だったら、お願いしてみよう、とトライする事にした。

革ジャン紳士にあたって砕けろ!とばかりに、
「私は日本から来ました!写真を撮ってもよろしいですか?」
革ジャン紳士は、にっこり笑って快く受けてくれた。
‘強い人は優しい’は私の格言である。いままで例外は現れていない。
残っていたみんなで記念撮影もした。いい記念になった。思い切って言って本当によかった・・・。

お昼を過ぎている・・・3人の先生がそろそろ帰るという。
みんなもいっしょに公園を出るようだ。
帰り際、革ジャン紳士がわざわざ振り返って私に握手を求めてくれた。
「また、いらっしゃいね」と。
一番偉い人が一番気さくだった・・・。


今回の旅のベストショットです!


太極拳実践
氏隠と残って、技の実践をしてもらった。
私に‘対練’が出来れば受けて立てるのだろうが、これまた情けないことに私にはそれすら出来ないときてる・・・
一方的に技をかけられまくっていた。
実践は目にもとまらぬ速さで「ピャー!」とかけられてしまう。
あっという間に、倒され、バランスを崩される。「赤子の手を捻るよう」というのはこのことだ。

幼稚園児のこっちは
「ぎゃー!おっとっと・・・ひょえー!」の連続だ。
「わかった、今度は私にかけさせて!」と挑むが、ピクリとも動かず、反対に倒されてしまう・・・。
「あれえー?」情けないにも程がある!

推手にも挑んだ。ものの見事に、軽くあしらわれて「一丁あがり」だった。
「ふー、どれどれ・・・バランス・・・バランス・・・バラン・・・ん?ひゃー!
と、あっ、という間に、アンバランスになってしまう私だった・・・。

きーっ!くっ、くっ、くやしいーっ!!」が、弱いものは弱い。
何度挑んでも、跳ね返されて「一丁あがり」だった。それにガ体が違いすぎるってば・・・!
みんなで撮った記念写真を見ても、私が一番の‘へなちょこ’じゃないか(泣)
こんな貧弱な体ではどうにもならないよ・・・いや!‘へなちょこ’でもさえあれば・・・?



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vol.23