故宮博物院(3) 書の2
宋代以降
<このページには私が実際見たもの、見たかったものを集めています>
(館内は撮影禁止ですので、写真は資料からの転載です)

2階 書
時代
人名
作品名
宋 
徽宗
     「詩帖」 (台北)

     

宋代は中国の戦国の真っ只中にあって、珍しく自由の風が吹いた時代である。
と私は思っている。
中国の歴史の中でも好きな時代のひとつなのです。
詩をはじめとする芸術がここには満載である。
‘竹林の七賢’が登場するのもこの時代でなかったでしょうか?
これはもしかしてトップが芸術を愛したからではないでしょうか・・・?
唐の太宗、清の乾隆帝もコレクションとしてまとめる造詣はあっても、
徽宗ほどではないでしょう。
なぜなら、この皇帝はマルチだったのです。
収集家としてだけでなく自ら「書」、「絵画」の名士だった。

徽宗の字体は‘痩金体’(そうきんたい)と呼ばれているように、針のように細く、
鋭利な書体である。
ある研究者によると古今の著名人(書家に限らず)の字体を研究したところ、
学者や知識人は一様に「細くて小さい字」を書いているのだそうです。
だとすると、徽宗は頭脳明晰皇帝だった・・・。
心理学的に照らし合わせると、「細くて小さい字」の意味するところは、
「社会を一歩引いて、冷静に見ている」のだそうな。
蘇軾
     「寒食帖」 (台北)

     

書の内容は自然と時代を反映しているものです。

才能がありながら、左遷され南方の黄州へ・・・。
「三年経った。いたずらに流れていく時間・・・気がつけば白髪の老人になっては
いまいか」
「・・・壊れたかまど、みすぼらしい暮らし・・・国のために働きたいが、
都とは万里を隔てていて、それも叶わない・・・」
あせりと、志が遂げられない身の上を嘆く。
ひときわ大きく太い‘哭’の文字。
道に窮している蘇軾の思いが伝わる。

蘇軾は詩人としても有名です。
私が初めて名前を耳にしたのも漢詩の中でした。
米ふつ
     「蜀素帖」 (台北)

絹の上に書いている。


文字の変遷
(一例です)
甲骨文字
紙が発明される古代中国では動物の骨に文字を彫り刻んだ。

篆書」(てんしょ)
印鑑の文字に多く見られる文字。書の臨書としても筆で書かれる。
     

隷書」(れいしょ)
平たく裾が広がった形の文字。はねる際の筆使いに力が入る。
     

楷書」(かいしょ)
漢代の清書文字として使用され、現在に至る。

行書
時代的には楷書以前から広く書かれていたが、楷書が崩されているため
読めない人も多かった。

草書
行書を更に崩した文字。
基本(楷書)を踏まえた人のみが書ける高度な技術が要求される。


宋の四大家とは
宋代は芸術面で華やか、激戦区の時代だった。
百花繚乱の個性的な書家が数多く現れたのもこの頃だ。
このことは、宋という時代背景を抜きには語れないが、
そのことは1997年開封に少し書いていますので、ご覧ください。
ともかく、自由な気風の中で書の形も育っていった。
その中で際立つ4人が選出されたというわけで・・・。

一、 蘇軾
   

一、 黄庭堅
   

一、 米ふつ
   

一、 蔡襄
   

いずれの人物も書家としてだけでなく官僚文人としても有名。
 


2階 文宝


文宝四宝とは
一、
   「李廷挂の墨」
   当時、質の良い墨を作る職人には貴族の名前まで授けた。
   李という姓も帝からいただいたものだったと言う。
   それほど「黄金は得やすく、李墨は求めがたし」だったのである。
   台北故宮博物院には、長さ30cm、幅8cm、厚さ1cmの李墨があるはずです。
   表面はぼこぼこに突起していて、雨雲の墨雲(ぼくうん)の由来になってる墨です。
   蘇軾は常に最高の墨を求めたと言います。
   李廷挂の墨をさしてるのは言うまでもありません。

一、
   弘法筆を択ばず、と言いますが、良い道具を持つことは、その道を極めたい人にとって
   悲願でもあります。
   ヴァイオリニストならストラディバリを手に入れるために全財産を投げ打つのといっしょです。
   吟味する目も養われているだけに、それだけ厳しくなる。
   書の世界では「筆硯精良人生一楽」と言って、質の良い道具を手に入れることが
   人生の楽しみのひとつでもあったのです。
   私でさえ、太極拳の剣や刀を択ぶ際はそれなりにしなり具合などを吟味します。
  ちなみに狼の筆はしなりが良かったそうです。

一、

一、
   1994年初めて中国に旅行したときのこと、洛陽で「端渓の硯」を見つけた。
    すっごーく欲しかった。
   でも、いつも極貧旅行の私は涙を飲んで我慢した。
   今思えばあの時こそ‘買い’だったと悔しい思いをしている。

   「端渓の硯」というのは、硯に天然の‘石の目’が入っているのである。
   端渓で取れる硯用の黒い石に、緑の丸い模様がボコボコ入っている。
   私は噂には聞いていた「端渓の硯」を洛陽で初めて目にした。
   墨のすり具合がいいだけでなく、見た目にも美しい。


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vol.7